新時代の中国EVメーカー「NIO(蔚来汽車)」
「ライフスタイル」の提供とデジタル活用の戦略紹介 その1
2020/4/8のYahoo!ニュースへの寄稿記事を、著者の許可を得て転載しております
提供するのは「高級会員制サービス」
「中国のテスラ」と言われている、新進気鋭の電気自動車(EV)メーカー「NIO(蔚来汽車)」。「アフターデジタル」の著者のビービット藤井氏によると、NIOは「テスラは顧客へキーを渡すまでが仕事だけれど、NIOはキーを渡してからが仕事だ」と言っているという。
これはどういうことだろうか。
車メーカーでありながら、「高級会員制サービス」という側面を持っているのがNIOの特徴だ。いわば「NIOの会員チケットが600万円(実際のところ車代だがその比喩)、それを買ったら車がお土産として付いてくる」という考え方のようだ。
参考:『アフターデジタル』主著者 藤井保文と考えるこれからの10年|オフライン消滅後の世界を占う中国最新事例
アプリで高頻度で接点を取りつつ、コミュニティ・帰属意識を醸成
この「高級会員制サービス」を成り立たせるためのハブとなっているNIOのアプリについて詳しく見ていこう。
まずはNIOユーザ同士のSNS機能がある。ここではNIOのカーオーナーたちが日常の写真や、NIOで行った場所の写真、「NIO House」で仕事をしている写真などをアップしている。「NIOってカッコ良い」というロイヤリティ意識や帰属意識を醸成する意図もあるだろう。
また毎日アプリにチェックインするとポイントがたまる。チェックインは一日1回しかできないので、ポイントを貯めるには頻繁にアプリを開く必要がある。
アプリを開けば、ポイントを貯めるためのチェックインだけではなく、SNSやイベント情報など他の情報も目に入る可能性もある。高頻度で接点を取ってエンゲージメントを高めていく、うまい仕組みだ。
たまったポイントは、アプリ内のECサイト(ショッピングサイト)でおしゃれな日用品やNIOグッズを買ったり、「NIO HOUSE」のカフェで飲み物を買うのにも使える。
ちなみに取り扱われているNIOグッズは皆なかなかおしゃれである。扱われているラインナップも、パーカー、Tシャツ、カーディガンなどの洋服に始まり、カバンや筆記用具、コーヒーカップにグラスなど、多種多様だ。
店舗でもいくつか販売されており、筆者も何度か店舗を訪れているうちに思わずスマホケースを購入してしまった。
筆者はNIOの車を持っているわけではないが、おしゃれなNIOグッズを持ち、身に着けることがステータスとなり、ロイヤリティ醸成につながることを身をもって感じている。