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ディー・エヌ・エー 村上 淳 氏
「ビッグデータで生活体験を向上させる」

DeNA AI戦略推進室 室長 村上 淳さんに、DeNAにおけるAI、ビッグデータの活用について伺いました。インタビュアーは日本能率協会、小関俊洋です。(以下敬称略)

ビッグデータで生活体験を向上させる

(小関)御社ではAI、ビッグデータをどのように活用しているのでしょうか?

(村上)DeNA はモバイルゲームやプロ野球の球団運営などいろんなことをしているので、「何をしている会社かよく分からない」と言われることもありますが、弊社の強みはインターネットとAIを活用した事業化能力にあります。AI、ビッグデータも機械学習と呼ばれていたころから活用してきていました。今では自社内のサービスだけではなく、パートナー企業様との新規事業でも活用することが増えています。

具体例を挙げると、つい先日「0円タクシー」でメディアにも取りあげられた次世代タクシー配車アプリ「MOV」でも、AI探客ナビという機能が来年実用化する予定です。MOVはタクシーの配車アプリですが、「運転中のタクシーが走行した位置や車速などの情報を用いて生成された道路交通情報」や「気象、公共交通機関の運行状況、イベント、商業施設などのPOI情報、道路ネットワーク構造」などのデータからタクシーの需給予測を行い、乗務員の方をリアルタイムかつ個別にお客様が待つ通りまで誘導することが可能になります。

タクシーの乗務員さんはこの機能によって、今までよりも効率的にお客様を探すことができ、お客様もよりスピーディーにタクシーを捕まえることができるようになります。お客様も乗務員さんも両方が幸せになるわけです。

詳しくは1月の講演でお話しすることになると思いますが、他にも「オートモーティブ領域や弊社カフェで」の実証実験、「マンガボックス、SHOWROOM やハッカドール、逆転オセロニア」などの自社サービス等、さまざまな領域で深層学習およびデータサイエンスを活用しています。
既に事業の中で活用しているものもあるし、現時点では実証実験段階のものもありますが、続々と新たなサービスにチャレンジし、利用者の生活体験の向上を目指しています。

AI時代に備えた組織体制

(小関)村上さんの所属するAI戦略推進室について教えていただけますか?

(村上)全社的にAIを活用していこうと、2016年にAI戦略推進室ができました。AI技術の発展を見据えた新規事業を考える部署が必要だったのが設立の目的です。AI戦略推進室と同時期に設立されたAIシステム部には、AIやデータサイエンスの専門家が所属していますが、両部門で連携して新規事業開発や各事業部でのAI活用を推進しています。また、各事業部の案件については、事業ドメインの知識がとても重要になりますので、リーダーシップは各事業部が取っています。

また、弊社では事業データを分析してサービス改善提案に活用するデータアナリストは事業部に所属しています。データ分析においては、サービスのドメイン知識がとても重要になるからです。AI技術だけでサービスが作られるわけではありません。ビジネスプロセス整理からデータ準備、分析など、すべてを一人でできるスーパーマンはいないので、得意な領域を分担しながら、チームで推進しています。

組織の立ち上げ時は社内のAI活用推進案件が多かったのですが、現在はパートナー企業との新規事業を進めるプロジェクトが増えています。部署設立当初は社内でAIの基礎勉強会を開催していましたが、社内でのAI技術活用はかなり浸透してきていると思います。

エンジニアが魅力を感じる職場環境

(小関)前回大阪で開催した「AI・ビッグデータ活用フォーラム」では、人財確保が大きなテーマでした。御社での取り組みはいかがでしょうか?

(村上)今年から「Kaggle社内ランク制度」を設けました。コンピュータービジョンやデータサイエンス等のエンジニアを中心に採用していますが、そういった人財が業務と並行して、幅広いデータ分析のスキル・経験を積むことができる環境づくりを目指した制度です。

Kaggleは機械学習モデルを構築するコンペティションのブローバルプラットフォームで、世界のトップクラスのサイエンティストが集まる場です。弊社にもトップクラスの成績を収めるものが何名かおりますが、一定の成果を認められると業務時間を使ったKaggleへの参加を認められる制度を導入しました。

日本の中だけにいるとわかりませんが、AI人財は世界でみるとすごいことになっています。強烈な獲得競争が起きている。もともとDeNAにはエンジニアを大事にする文化があって、在宅勤務や勤務時間の自由度も高く、そういった意味では、働きやすい環境が整えられていると思いますが、さらにDeNAで働くことに魅力を感じてもらうためにはどうしたらいいかということで、この制度を設けました。

業務内容の面でも、DeNAには他の会社にはない魅力があると思います。他の環境ではなかなかできないような面白いプロジェクトを手がけることができると考えています。ゲーム、Eコマース、エンタメ、スポーツ、ヘルスケア、オートモーティブ、ソーシャルLIVE等様々な分野のデータを使って、AI研究開発に取り組むことができる。扱うデータの幅の広さはDeNAの大きな特徴でしょう。研究開発の成果をサービスとして提供し、社会からのフィードバックに興味を持っている人たちにとっては、すごく魅力的な環境だと思います。協業として様々なパートナー様とも仕事をするので、データの幅はさらに広がるでしょう。Kaggleをやっている人にとっては、コンペティションには出てこないようなデータにも触れるので、本当に面白いと思います。

AIが当たり前になるとき

(小関)講演に参加される方へのメッセージをお願いします。

(村上)冒頭にも申し上げましたが、インターネット業界ではAI、ビッグデータをずっと使ってきて、既に使うことが当たり前の技術になっています。今ではネット企業以外の活用も増えてきています。これからは、データ活用が当たり前の時代になっていくでしょう。月並みな言葉で言うと、ネットとリアルが融合して、垣根がなくなっていく。その中でこれからは、どのように自分たちのサービスで使っていくかを考えるのがポイントになると思います。

「AI・ビッグデータ活用フォーラム」では、私たちの取り組みとどんな苦労をしてきたのかをご紹介できるのではないかと思います。これからAI、ビッグデータに取り組んでいく方に少しでも参考になればと思います。弊社では、様々なパートナーと共同で取り組みをしているので、講演を聞いて、「一緒にやろう」と思ってもらえる企業さんが現れると嬉しいですね。


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