Suicaの開発者がやっぱりすごかった
【R&D事務局後記③】
日本能率協会が主催する『R&Dイノベーションリーダー交流フォーラム』事務局が開催後に感じたことを共有します。
2019年12月18日、この日はゲスト講師にJR東日本メカトロニクスの椎橋会長をお迎えしました。
椎橋さんは、“Suica”を世に送った開発者として有名です。講義では、密度の濃い開発秘話や苦労話、そして将来に向けた具体的な夢まで、大いに語っていただきました。
椎橋さんがこれまで手掛け、そしてこれからの為に取り組んでいるイノベーションは、以下の3点にまとめられます。
イノベーション1:「磁気切符」から「ICカード乗車券」へ ~コア事業(=鉄道)の革新~
イノベーション2:「交通」と「通信」の融合 ~モバイルSuicaが変える事業構造とライフスタイル~
イノベーション3:Suica情報を活用した新しいビジネス ~情報の見える化による新サービス~
まさにSuicaを軸とした鉄道事業の枠を超えるイノベーションです。
しかし、開発当初から上記のようなイノベーションのイメージがあったわけではないといいます。
椎橋さんはこの講義の中で、折に触れ3回同じことを述べていました。それは、
「半年や1年分の高額な定期券を購入した顧客(利用者)が、単に定期券を失くしてしまった、というだけで全額改めて負担しなくてはいけない、という理不尽はなくさなければならない。」
ということでした。
改札員が直接入鋏する切符からICカードへの変革と聞いて、壮大なビジョンと戦略の話を勝手に思い描いていたところに、この話には虚を突かれました。
曰く、「お客様目線で改善していったら、イノベーションにつながった。」と。
もちろんSuica構想には、壮大なビジョンも周到な戦略もありますが、いつでもすぐに戻れる開発の原点があるかないか。この問いは、深く受講メンバーの胸にも突き刺さったようでした。
最後に、Suica開発プロセスにおける椎橋さんは、緻密でした。
みんながワクワクする大風呂敷を広げて経営陣の期待をつなぎつつ、その裏では損を出さぬように、ビス一本からの積算もおろそかにせず、100億円をこえる投資の回収の道筋を示してきました。
椎橋さんが掲げるイノベーションには、実は、イノベーション0があります。
イノベーション0 :国鉄改革とJR東日本 -民間会社とは?(構造改革と意識改革)-
国鉄から民間会社への移行は、国鉄入社組の椎橋さんにとって、価値観が180度変わる経験だったといいます。
「私が変われば会社が変わる!」とスイッチが入った、と椎橋さんは言います。
受講メンバーはちょうどその時の椎橋さんの世代です。気持ちがぐっと引き締まったことは言うまでもありません。
「R&Dイノベーションリーダー交流フォーラム」
https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=100290