産業データ連携とデータスペースについて
TECHNO×FRONTIERでは、産業データ連携の正しい理解と活用を促進します。
はじめに
今、世界中の工場や会社が大きく変わろうとしています。
昔は、いいモノをつくることさえできれば、それだけで十分に通用しました。でも現在は、どれだけ速く、どれだけ正確に、どれだけ環境に優しく、どれだけ多くの会社と協力できるか
——そうしたことが求められる時代です。
そこで必要になるのが「データ」です。
製造現場の機械や部品の動き、材料の在庫、電気の使用量など、すべてをデータとして記録・共有すれば、もっとムダを減らせます。
そしてこのデータを他の会社と安全にやりとりできれば、さらに仕事はスムーズになります。
たとえば、自動車1台をつくるのに、何百社という会社が関わります。それぞれがデータを持っていて、全体で協力しないと完成しません。
このとき「どの会社のどの情報を、どうやって共有するか」がとても大事になります。
この考え方は、もうヨーロッパでは当たり前になりつつあります。
日本でも、未来の工場を考えるなら、「データでつながる」ことは避けて通れません。
このWEBでは、ヨーロッパで進んでいる「データスペース」という仕組みや、日本の会社がこれからどう動くべきかを、解説します。
1.インダストリー4.0とは
ドイツが2011年に発表した“第4次産業革命”の構想です。
工場やモノをインターネットでつなぎ、効率よく・自動で・柔軟に動くしくみを作ろう、という考え方です。
キーワードはこの4つ:
- 相互運用性(色々な機械やシステムがつながる)
- 情報の透明性(データを正確に見えるようにする)
- 技術的アシスト(AIやロボットが人を助ける)
- 分散的意思決定(現場の判断を速くする)
この考え方を土台に、ヨーロッパでは次のステップ「データスペース」へと発展しています。
2. データスペースってなに?
会社同士が「安全に」「必要な部分だけ」データをやり取りできるようにした仕組みのことを、「データスペース」と言います。
例えば、
- A社が「この部品はいつ納品できます」と入力
- B社がその情報を見て「じゃあこの日に組み立てよう」と判断
- このとき、A社のすべての情報が見えるわけではなく、B社が必要な情報だけを安全に見られるように設計されています。
つまり「見せたいところだけ」「決められた相手に」見せられる仕組みが整っているのがデータスペースです。
3. 実際にどんな事例がある?
◯ メルセデス・ベンツ(ドイツ)
部品のサプライヤー(供給元)から、納品日、素材、リサイクル情報などをデータで受け取り、自社の製品に組み込む判断をしています。部品の情報は“デジタルパスポート”として管理され、リサイクル業者にも活用されています。
◯ Catena-X(カテナエックス)
メルセデス・ベンツ、BMW、ボッシュ、SAP、シーメンス、ダッソーシステムズなど、100社以上が参加する自動車業界のデータスペースです。
部品から車両、整備やリサイクルまで、データでつながっています。
◯ Factory-X(ファクトリーエックス)
ドイツ政府の補助金で進められているプロジェクトで、工場内のエネルギーや設備の情報をつなげ、効率を上げるしくみです。数年後にはManufacturing-X全体の心臓部になると見込まれています。
4. 日本企業はどう動けばいいの?
「うちは今困っていないから…」という声もよく聞きます。でも、これから困るかもしれません。
ヨーロッパではすでに「つながれる会社だけと取引をする」という動きが進んでいます。
つまり「データスペースに入れない会社=ビジネスのチャンスを逃す会社」になるかもしれません。
最初の一歩として大事なのは、以下の3つです:
- 自社の中でデータがきちんと整理されているか見直す
- 他社と共有しても問題のないデータは何かを考える
- 小さくてもまずデータ連携を試してみる(パートナー企業と)
5. TECHNO×FRONTIER2025では何が学べるの?
TECHNO×FRONTIERでは、以下のような体験ができます。
- 展示ブース:SAP、ダッソー、シーメンスなど、データ連携の先進企業の展示を見ることができます。
- 入門セミナー:「データ連携ってなに?」という方でも、ゼロからわかる内容の講座があります。
- 事例紹介セッション:ヨーロッパや日本で実際に使われている事例を、企業の方が直接解説してくれます。
「難しそう…」と思っていた人でも、「なるほど、こうやって始めるのか」とイメージできるようになりますよ。
TECHNO×FRONTIERでは、産業データ連携の正しい理解と活用を促進します。
用語解説
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データ連携
会社や工場などが、必要なデータをやりとりしながら協力すること。例:在庫情報を共有して、ムダな注文や遅れをなくす。 -
データスペース
安全に、必要なデータだけを見せ合える“共通のルールとしくみ”。他の会社と安心してデータを共有できるようになる。 -
インダストリー4.0
ドイツから始まった考え方で、工場や機械をインターネットでつなぎ、効率よく自動で動く“かしこい工場”を目指す動き。 -
GAIA-X(ガイアエックス)
ヨーロッパで進められている、安全なデータのやりとりのための枠組み。いろんな国や会社が参加している。 -
Catena-X(カテナエックス)
自動車業界向けのデータスペース。メルセデス・ベンツなどが使っていて、部品メーカーとデータでつながる仕組み。 -
Factory-X(ファクトリーエックス)
ドイツ政府が支援している工場向けのプロジェクト。工場の設備やエネルギーのデータを使って、よりよい運営を目指す。 -
デジタイゼーション(Digitization)
紙や口頭などのアナログ情報を、デジタルデータに変えること。たとえば、手書きの記録をパソコンで管理するなど。 -
デジタライゼーション(Digitalization)
デジタル化した情報を使って、業務全体を効率化すること。たとえば、データをもとに在庫を自動発注するなど。 -
DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタルの力で会社のやり方そのものを変えること。例:製造の進め方を見直して、新しい価値を生むようにする。
