コロナ禍だからこそ考える「制約からの解放」
【R&D事務局後記④】
日本能率協会が主催する『R&Dイノベーションリーダー交流フォーラム』事務局が開催後に感じたことを共有します。
2020年1月17日、この日はゲスト講師にSONY R&Dセンター技術主監の島田啓一郎氏をお迎えしました。
今振り返ると、この頃はコロナウィルスの話はほとんど話題にものぼらず、全員出席のもと、額を寄せ合いワークショップを行っていた、非常にいい時代でありました…。
島田さんは、日本トップクラスの開発者が集まるSONYにおいて、長きにわたって情報技術系の開発を担ってきた知る人ぞ知る開発者です。
この日は「顧客価値と技術革新と産業創出のからくり」というテーマにて、半日の講義とワークショップを行っていただきました。
最初に言ってしまいますが、島田さんの素晴らしいところは、ご自身のSONYでの経験や知見を、時間軸・技術軸・社会軸に見事に落とし込み、汎用性の高い教育コンテンツに昇華させている点にあります。
常に今の世の中において、何が変わってきているのか?未来はどう変わるのか?について、
ニーズ → テクノロジー → ビジネス
のサイクルで突き詰めて考え、実践して来られた方でした。
メンバーにとって、この日の一番大きな学びは、
「制約からの解放」でした。
島田さんは、「制約を減らすことが暮らしの文化と市場の創造につながる」と唱え、身近な事例をたくさん出してくれました。
「旅行」や「手紙」を、江戸時代と現代の文脈で置き換えてみたり、
ウォークマンの登場で暮らしがどう変わったか、について問いかけがありました。
例を挙げればきりがありませんが、それらの事例はすべて「○○という制約から解放した」という言葉に置き換えることが可能であることに気付きます。
「ウォークマン」→音楽を聴ける「場所」(@ステレオ前や重いラジカセ移動等)という制約から解放した、というわけです。
そこまで議論して、受講メンバーは気づき始めます。
顧客価値とは、顧客の「制約」を取り除くことに。
いったん気づくと、急に自身の担当業務や自社製品についての視野が広がります。
身の回りの制約を探すモードに切り替わったところで、島田さんは、こう教えてくれます。
「『制約』は5分野11種類あるんです。」(バーンとスライドで紹介)
顧客価値について突き詰めて突き詰めて考えた末に生まれた分類は、当然ながらSONY社内でも共有され、開発をリードする方々の思考基準になっています。
時代を経ても、同社のイノベーションの強さはこれらの思考の足腰がしっかりしていることに由来するのでは、と思わざるを得ませんでした。
受講メンバーがこの分類を握りしめて(心の中で)、明日からの仕事に活かしていこうと思ったのは言うまでもありません。
2020年4月23日、このコラムを執筆している今、世の中は、
「人と会うな」「接触は避けろ」「移動はするな」「マスクを着用せよ」等々、
3か月前には思いもよらなかった制約下に皆がいやおうなしにおかれています。
このような時だからこそ真剣に考えたい。
「制約からの解放」について。
「R&Dイノベーションリーダー交流フォーラム」
https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=100290