Withコロナ時代に加速するスマートシティへの移行
~中国のスマートシティ事情~
|イベントレポート
デジタル技術を生かした新たな都市づくりを日本政府も進める中、企業の持続的成長にむけて改革に挑んでこられたコニカミノルタ取締役会議長 松﨑 正年 氏と中国で深圳、蘇州、蘭州など10都市以上のスマートシティプロジェクトを手がけてこられたIngDanJapan 徐 国宇 氏(元Huawei)をお迎えして、特別講演会を開催しました。
当日は、お二人のキャリアを通したご経験をもとに【中国のスマートシティ事情】というテーマについて語って頂きました。
当日の模様から一部内容をレポートとしてお届けします。
【イベント詳細はこちら】
「経営トップ対談 Withコロナ時代に加速するスマートシティへの移行
~中国のスマートシティ事情~」オンライン特別講演会
https://jma-garage.jma.or.jp/konica_huawei/
イベント動画
中国のスマートシティの現状(徐氏講演)
中国政府は、スマートシティの構築に毎年数兆元規模の投資を行っています。この数年、地方都市はスマートシティの構築を行うことで大きく発展してきました。スマートシティにはクラウド、ビッグデータ、IoT、5G、AIなどの技術が活用されています。
中国のスマートシティは4つの階層で構成されています。最下層(第1階層)は、画像認識やIoTセンシングから収集された膨大なモニタリング情報を含んでいます。こうしたビッグデータは5Gを使って上位層に上げられ、デジタル技術の活用により交通、教育、リテール分野などのスマート化が実現されています。第3階層はデジタルプラットフォーム(以下、PF)、最上位層(第4階層)は脳(IOC)と呼ばれています。このようにスマートシティは1つのデジタルPFと1つのIOC、および複数のスマートアプリケーションで構成されています。
スマートシティの構築は、中国情報通信研究院が制定した「技術標準」で統一されています。この標準を参考にしながら、地方都市はそれぞれの独自性を出しています。たとえば、観光都市として有名な敦煌市はスマート観光に注力し、ビッグデータ産業が活発な貴陽市ではビッグデータの発展に重点を置くなど、それぞれの特色を打ち出しています。
中国には数千の都市があり、各地でスマートシティが構築されているため、さまざまなプレイヤーが進出する大きなマーケットになっています。スマートシティに参加するプレイヤーには、ファーウェイ、テンセント、アリババ、中国平安などのようにPFを開発する企業、アプリケーションを開発する企業、運営を担当する企業などがあります。スマートシティでは、プレイヤー同士が共存共栄することで、各スマートシティにはエコシステムが生まれ、数多くのイノベーションも生まれています。
スマートシティの構築は、まず地方政府が中期計画を立案、トップレベルデザインを行います。その後、コンペを実施し、建設を経て、運営を行うのが一連の流れです。
IOCは都市全体を管理する脳としての機能や、都市情報のダッシュボード、政府の意思決定のサポート、事件・事故・災害の管理・モニタリングや応急指揮を行っています。
例をあげると、IOCは交通状況などをマクロ的に示すことで、都市の運行に関連する情報を統括し、情報を統合して比較と分析を行っています。コロナ禍では、IOCセンターにいながら、政府は都市全体の状況を把握し、指示を出しました。ミクロの視点では、IoTのデータに基づいて、都市の電柱やマンホール、水、電気などインフラの分布と稼働状況をモニタリングし、リアルタイムのメンテナンスを実現することで、市民の利便性を向上させています。
スマートシティの構築を通じて、さまざまなイノベーションも誕生しています。コロナ禍の武漢市では配膳ロボットの活用によって非接触のサービスが実現しました。また、行列ができる喫茶店ではスマートサービスの利用によって、オーダーしたものがロッカーで受け取れる非接触サービスも話題になっています。
日本の企業はどうしたら中国のスマートシティへ参入することができるのか(対談)
松﨑氏:
非常に興味深かったのは政府主導でスマートシティの技術標準を作り、どのスマートシティも共通の構造をしていることでした。そのなかでプレイヤーが決められ、アプリケーション開発にもさまざまな企業が参画している。飲み物をロッカーで受け取れるサービスは、共通のインフラあるいはPFを使って活用しているということでしょうか。
徐氏:
ファーウェイやアリババなどが独自に作った技術標準は共通している部分が多く、現在の技術標準と似ているものでした。活用段階に入った中国スマートシティへの日本企業の参画は大きなビジネスチャンスになると考えています。日本企業は製造業やロボットなどに多くのノウハウがあるので、事例で紹介したロボットレストランに日本の技術を導入できれば、より良いものに改善できると信じています。
ただし、中国では技術標準に基づいてバリューチェーンが形成されており、それぞれの企業の役割も決められています。出来上がったエコシステムに進出するには入念なリサーチが必要になるでしょう。
松﨑氏:
中国のスマートシティに参画している日本企業はありますか。
徐氏:
スマートカーにはトヨタが、小売りにはセブンイレブンが進出しています。中国のスマートシティに進出するには、中国と日本の違いや自社のポジションについて明確にする必要があります。そして、どのように参画すべきかを把握できれば、より効率的でしょう。
松﨑氏:
日本企業が中国のスマートシティに関わるには事前調査を行い、中国政府と相談して、パートナーを見つける必要がありそうです。企業が単独で進めるのは難しいかもしれません。IngDan Japanでは詳細なサポートを行っているというお話でした。
中国のスマートシティに参加することで、日本の企業は何を学び得ることができるのか(松﨑氏講話)
徐さんのお話を伺って、企業としても日本としても学ぶべきことや日本より先行している面があることを感じました。
かつて日本企業は、ビジネスモデルで日本より先行し、日本とは異なる進化を遂げた米国に拠点を設けたり滞在したりして学び、日本に応用してきました。たとえば、コンビニエンスストアや量販店、あるいは物流などがその代表例です。米国はスケールの大きいマーケットだったため、日本企業は実証データを取ることで商品づくりに活用してきました。
深圳を訪れた際、さまざまな話を聞いて感じたのは、たとえばスマートフォンのアプリケーションを使いこなす場面では、中国は日本とは違った形で進化し、スピード感をもって進めていたことでした。このような面は中国から学ぶ必要があるでしょう。
スマートシティへの進出事例として、すでに現地に拠点を設けているコンビニエンスストアと自動車メーカーの話がありました。これらの企業はそうしたDNAを持っている印象でした。ほかの企業もこうしたスタンスで学ぶべきものを学び、自分たちの良さを中国で組み合わせて、活かしていく必要があると考えています。
本日の対談をお役立ていただければ、光栄に思います。