社会起業家に学ぶ、SDGs時代の新規事業開発のヒント
「新規事業の検討にあたり社会起業家とチームを組みたいので紹介してほしい」
筆者が所属するNPO法人ETIC.(エティック)は、
ここ2~3年、大手企業からこうした依頼を受けることが増えてきている。
幹部層向けの研修に社会起業家との対話を組み入れたいという依頼も増えている。
ボランティアや社会貢献が目的ではない。事業や経営そのものに関わる依頼である。
とはいえ、社会起業家は大手企業と比べると圧倒的に事業規模は小さい。
年間予算規模は大手企業と比べると少なくとも2つか3つは桁が違う。
では大手企業(に限らずビジネス全般)が、社会起業家から何を学べるのか。
8月に開催するセミナー「サステナブルビジネスカフェ」に登壇する社会起業家の事例を参考に、その一部を紹介したい。
(1)解くべき課題についての知見を有している
彼らは、特定の社会課題の解決に向けた強い情熱を伴って起業することが大半だ。
例えば高齢者の住まい探しの分野。高齢者の入居申込は10件中9件断られることも珍しくない。
孤独死などのリスクを避けたい不動産会社や大家さんが多いためである。
通常のビジネスなら「市場性がない」と結論付けて終わりである。
しかし、「R65不動産」代表の山本遼さんは違った。何百人もの困難を抱える高齢者に丁寧に寄り添ってきた。
最初は1件ずつ手探り。その過程を経て、机上のリサーチでは知りえない高齢者や不動産会社、大家さんが抱える事情を深く知ることになる。
結果、保険会社と連携した専用の保険や、NECと共同開発した照明型の見守り機器などの新しい解決策を編み出し、実現する。
社会起業家は、解決のためのアイデアを豊富に有している。
それ以上に、解くべき価値のある課題についての圧倒的な知見を有している。
ここに企業が社会起業家に学び、協働していく可能性がある。
(2)少ない資源で問題を解決する知恵や工夫がある
社会課題には、解決策が存在しても、事業として成立しないから普及しないというケースが結構ある。
それでも諦めず、知恵や工夫で突破するのが社会起業家である。
例えば、2009年に竹内弓乃さんが共同代表として創業したNPO法人ADDS。
自閉症に有効な早期集中療育を広く提供するための予算や人材が社会的に不足する中、保護者を支援者にするためのトレーニングを開発し、この制約条件を突破している。
資源が豊富にないからこそ、新しい知恵や工夫が生まれてくる。
近年は、AIを活用した支援の質向上や、ロボットやVRを使った人材育成にも取り組み、そのノウハウを全国に広げている。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大は、深刻な社会課題を人々が同時に経験するという戦後初の機会となった。
企業がSDGsに取り組むことは、単なる善行ではなく、企業そのものの持続に不可欠であることを痛感した方も多いのではないだろうか。
ぜひ、社会起業家との対話や協働を通して、企業の中にはない知恵や発想を獲得し、それを習慣や仕組みにしてほしい。
ユニリーバやフィリップスなどのグローバル企業は、オープンイノベーションに社会起業家を積極的に巻き込んでいる。
それが企業の競争力強化であり、社会の持続可能性につながるはずである。
とはいえ、いきなり組織を動かすのは難しい場合も多い。
その場合のカギはまずは個人として動き、社内外に仲間を見つけてほしい。
こうした問題意識を持つ人は、格段に増えている。
【関連オンラインセミナーのご案内】
◆◇サステナブルビジネスカフェ ~社会課題に挑むリーダーに学ぶ~◇◆
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・第1回「解くべき課題をどう設定し、どう事業を創造するのか」
・第2回「過去の延長線上にない取り組みをどう社内で進めていくか」
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【日程】
第1回:2020年8月19日(水)15:00~17:00
第2回:2020年9月 2日(水)15:00~17:00