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【魚眼 虫眼 鳥瞰】 優れた議論の場をつくる

月刊情報誌『JMAマネジメント』の連載記事の一部をご案内いたします。

各界の著名なリーダーも愛読する、『失敗の本質—日本軍の組織論的研究(中公文庫、1991年8月初版発行)』のカバーデザインが、最近のビジネス書らしくなっていた。多くの人に読まれるための工夫だろう。よく見れば昔の表紙が下にある。

同書を読まれた方がたは、場の空気を読みながらも、異論も唱えず、議論なかばで、重要な判断がされたことを、あってはならない手本と考えられたかもしれない。しかし、そうした部分を多くの日本企業が払拭できないのは、どうしてなのだろうか。「日本人の特性や文化だから」と、片づけるわけにはいかない。

近年起こった企業の存続を揺るがす事件の背景には、こうした「場の空気」があったのではないかと推察できる。たとえば、不作為に対して下位の者が正面から正すことができない社内風土、いくら実力があっても上司に気に入られなければ昇進できない情緒による評価など、内向きの姿勢を保守する者が昇進するという組織論理が、取り返しのつかない結果を生んだのではないだろうか。

欧米を中心とするグローバル企業においては、メガトレンドを内部の役員に限らず外部有識者も交えて継続的に議論するなかから、次の戦略を立てる。その議論によって、多面的、多層的な視点から内容が磨かれるという側面を大切にしており、議論が水面下でされるのではなく、開かれている。

また、ビッグデータやAI、IoTの進歩と活用が進みつつあるなか、根拠に基づくマネジメントはさらに精度を増すものと考えられ、そのことは、議論の進め方にも反映されることだろう。

こうしたグローバル企業のように、メガトレンドや合理的根拠を重視する日本企業も増えはじめているが、開かれた議論から生まれる「知」を結集することが肝要ではないだろうか。議論は、さまざまな背景や角度、分野、知識をベースに、そこに参画する人がもつ多様な知や情報から、知恵に昇華させ、さらに良い結論を導き出すためにある。開かれた議論の過程からは、イノベーションの芽も生まれるのではないだろうか。

(編集室 ブンヒン
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