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【Global Trend – In and Out】
ワシントンは今(後編)
日本出国から帰国までのいろいろな手続き

前編では、ワシントン出張における雑感を書きましたが、今回は日本の出国から帰国までのさまざまな手続きについてご紹介したいと思います。コロナウイルスの感染拡大状況によって対応は異なりますが、これからの海外出張の参考となれば幸いです。

執筆者

許 光英

許 光英 
シニア・プロジェクト・マネージャー :
株式会社 電通PRコンサルティング

日本出国前から準備は始まる~PCR検査とワクチン接種証明書

12月初旬に米国が渡航制限を強化し、入国24時間前のPCR検査を義務づけました。ほんの1週間前までは72時間前まででよかったのですが、米国の各地でオミクロンが発生したことにより、厳格になりました。出張にあたっては、どこで検査を受けることができるのか、どこの検査証明(陰性)なら米国で認められるのか、Webで探してもわからないことが多いですが、幸い、数週間前にサンフランシスコ出張をしていた同僚がいたため、新宿のクリニックを教えてもらいました。このクリニックの場合、海外向けということで“Health Certificate for COVID-19”というタイトルの陰性証明書に英語が併記されていました。PCR検査は3000円程度から受けることができますが、今回の費用は16000円で、やはり海外向けは高くなります。価格が高いせいか、それとも各国で渡航制限があり旅行者が少ないせいか、とくに混んでいませんでした。

入国24時間前のPCR検査が必要な場合、17時が飛行機の出発時間だとすると、前日の17時以降に予約する必要があります。予約した時間にクリニックに行き、鼻に長細い綿棒を入れて、くるくる回して終了。所要時間2分程度でした。検査結果は5時間くらい後にメールで届きますので、それをカラー印刷して、あとは出発のチェックインの際に航空会社に提示すればOKです。航空会社に対しては、日本出国にあたってこの(1)PCR検査による陰性証明書と(2)ワクチン接種証明書、そしてこれらの所持に関する(3)誓約書が必要でした。(3)はチェックインカウンターでフォームが用意されていて、書き方も教えてもらえますので、とくに面倒はありません。

ワクチン接種証明書は、居住している自治体で英語併記のものを発行してくれます。直接窓口に行く場合と、郵送受け付けなど、自治体によって異なります。私は郵送のみの自治体でしたが、5日くらいで届きました。こちらはPDFでくれないので、自分でスキャニングして、スマホで表示できるようにしました。米国のレストランでの室内飲食などに提示する必要がある場合は、スマホで表示した方が便利だからです。

なお、今回は成田空港からの出発でしたが、成田エクスプレスやエアポートリムジンバスはほぼ全滅。京成スカイライナーは1時間に3本程度運行しており、さすが成田に強い京成と改めて感じました。もっとも1両に数人しか乗っておらず、「これはビジネス的には厳しいな」と思ったのも確かです。

かなり減便されている成田空港からの出発
かなり減便されている成田空港からの出発

ワシントンに到着してから~スムーズな入国審査

通常、米国の入国に際しては、外国人向けの窓口が3つか4つしか開いていないことが多く、ひどいときには1時間以上並びますが、今回は旅行客が少なかったせいもあり、混雑していませんでした。搭乗客はボーイング787に50人程度だったでしょうか。
入国審査はかつてないほどスムーズで、陰性証明書やワクチン証明書の提示は不要でした。出発時に航空会社がチェックしているため、到着時には不要ということです。それよりは、「何しに来たんだ?」「こんなクリスマス前にビジネスか?」「キャッシュはいくら持っている?」など一般的なことについて聞かれました。
乗客が少ないせいもあり、預けたスーツケースはすでにカルーセルから下ろされて、フロアに並べてありました。
ワシントンのダレス空港からホテルまでは、Uberを利用しました。UberもLyftも、スマホ手配の際に、「マスク着用は義務です。着用を約束しますか」というメッセージが出ますので、「はい」を押して予約します。運転手もきちんとマスクをしていました。ワシントンではタクシーも利用しましたが、運転手は全員マスク着用でした。

ワシントンではマスク着用が一般的

私が出張する12月初旬の直前、11月22日に“Mask Mandate”という室内におけるマスク着用義務は解除されていました。しかし、レストランやスーパー、コンビニ、ブランドショップなどの店舗や公共交通機関、タクシー、Uberなどでは引き続きマスク着用を求めていました。

ニューヨークなどではレストランで食事する際に、ワクチン接種証明書が必要だったりしますが、この時期のワシントンでは不要でした。高給のビジネスパーソンが行くレストランは大体満席のことが多いようでしたが、チャイナタウンでは閉店した店も多く、夜は治安が悪くなっているということを聞きました。実際、街角でたむろしている人たちはいて、なんとなく早足で通り過ぎました。

米国出国に向けて~どこでPCR検査を受けるか

日本入国の際には、コロナの陰性証明が必要です。日本政府の大使館や領事館のWebサイトに日本入国の基準を満たすPCR検査を行うクリニックのリストが掲示されていますが、ワシントンの場合、有償のPCR検査をする人は海外旅行者以外にはいないようで、リストにあったダウンタウンのクリニックはすでに閉鎖されており、検査できる場所は車で1時間かかる場所が多く、どうしようかと思っていました。
ワシントン在住の通訳者の方にお聞きしたところ、日本の入国で認められるクリニックを教えてもらいました。日本との主たる国際線発着の空港であるダレス空港(IAD)のそばにあり、出発の前日に検査することができました。

空港そばのクリニックでPCR検査
空港そばのクリニックでPCR検査

費用は15分で結果がわかるエクスプレスサービスで199ドル(約23000円)でした。このクリニックは、旅行者が主な顧客ということもあり、土日も含めて、毎日オープンしていました。
なお、現地で検査する場合には、電話やメールで「日本政府所定のフォーマットへの記載は可能か」ということを確認した方がよいと思います。今回のクリニックでは、すでにPDFをダウンロードして持っていて、名前や検査結果は手書きで記入し、シール(刻印)を押していました。
この検査結果は、出発のチェックインの際に航空会社がチェックしますし、日本の空港(羽田や成田等)でもチェックしますので、プリントアウトが必要です。クリニックで印刷してくれず、メールで結果が来る場合は、ホテルのフロントやビジネスセンター、FedEx Office(旧kinko’s)などで印刷する必要があります。

成田空港において~入国でもゼロリスクを目指す日本

着陸した後、まず、乗り継ぎの乗客が先に降ろされました。大体、15分くらい座席で待ち、その後、日本に入国する乗客が案内されて降機します。日本入国にあたっては、日本政府が求める誓約書、質問票、ワクチン接種証明書、陰性証明書が必要でした。まるでスタンプラリーのように、7~8ヵ所のカウンター(デスク)に連れて行かれ、その都度、何度もこれらの書類をチェックされます。何度も確認することでチェック漏れを防ぐという目的だと思いますが、同じ書類を何度も見るのは、やはり、日本はゼロリスクを求める国なんだなぁと改めて感じました。なお、英語やインドネシア語、タイ語、中国語、韓国語などを話す係員の方もいたようで、外国人旅行者への対応もできていたようです。私の場合は、ワシントンのみの滞在でしたが、数ヵ所に滞在した人は、「どこにどのくらいの期間いたんですか?」など、(ウラ取りはしないと思いますが)細かく聞かれていました。

成田空港での検査待ち“スタンプラリー”と空港検疫所発行の陰性証明
成田空港での検査待ち“スタンプラリー”と空港検疫所発行の陰性証明

成田空港では3つ目くらいのカウンターで、唾液による抗原検査を行いました。唾液を出させるために、梅干しやレモンの写真が張ってありました。この結果が大体、1時間くらい後に出ますので、それまでの時間つぶしとしてあちこちのカウンターに寄らせているのでは?という気もしました。

その後は、帰国後の自主隔離で所在地を確認されるアプリのインストールがあります。スマホを持っていなければ、空港でレンタルするという念書を書かされます。主に使うアプリは、MySOSというもので、2週間にわたって、「現在位置」「健康チェック」「テレビ電話による所在地確認」の3つを毎日1~2回チェックされます。「現在位置」と「テレビ電話」は、プッシュ通知に気がつかないと、再度かかってきますが、18時以降にかかってくることはあまりありませんでした。
そして、抗原検査で陰性となると、陰性でしたという紙をもらい、入国審査となります。今回、日本への入国者が少なかったこともあり(ワシントンからの便で、30人くらい?)、手続きは大変スムーズであり、預けたスーツケースもすでに税関前に並んでいました。到着後、大体2時間で入国できました。

自主隔離中はGPSアプリで監視される
自主隔離中はGPSアプリで監視される

今回、私は成田空港でしたが、飛行機を降りて、検査場までかなり歩きます。また、7~8ヵ所で書類チェックされる時にもあちこち歩かされますので、足が弱い方は要注意です(車いすの方もいましたが)。ハイヒールも歩きにくいかもしれません。それでも、以前よりは距離が短くなったということを聞きました。

公共交通機関による帰宅はNG~ホテル隔離がある場合はその準備を

今回は公共交通機関やタクシーの使用は禁止されていましたので、ワシントン出発前にハイヤーをスマホ(LINE)で手配しました。私が利用したハイヤーのサービスは「帰国者プラン」というもので、指定の時間を超えても2時間までは追加料金はなしという設定でした。今回、成田到着が15:30の予定でしたので、迎えの時間を17:30としました。夏頃は成田や羽田でのチェックに5時間くらいかかったという話も聞いていましたが、今はオフシーズンであり、2時間程度ではないかと思ったからです。幸い、17:30頃に入国審査を通りましたので、無事に帰途に就くことができました。費用は東京23区までで約25000円でした(京成電鉄にKEISEI SMART ACCESSという京成上野駅までのスカイライナー+自宅までのハイヤーを組み合わせたサービスもあります)。
帰国があと数日遅ければ、ワシントンからの搭乗者も3日間の強制隔離となり、(成田のホテルが満室だったので)福岡のホテルへ移動させられて、隔離となったようです。ただし、搭乗する都市で新しい変異種が発生しても、すぐ翌日から強制隔離にはならずに、3日間ほどは猶予があるようですので、絶望的になる必要はありません。

なお、前編でもご紹介しましたが、2021年6月にニューヨークから日本に帰国されたNHKアメリカ総局の野口修司記者は、羽田到着後、ワクチン接種を受けていない担当者たちから検査を受け、さらに横浜のホテルで隔離、窓からの景色ゼロで、11平米の部屋で閉所恐怖症になりそうな経験をされています。
隔離先のホテルではお酒の注文はできないため(できるホテルもあるかもしれません)、強制隔離が見込まれる場合で、お酒がどうしても飲みたい方は、出発空港預け入れのスーツケースにあらかじめ現地でビールやワインを入れておいたり(割れないように厳重なパッキングをお忘れなく)、免税店や機内でウイスキー等を購入してから日本に帰国した方がよさそうです。

海外への旅行や出張にあたっての渡航制限については、コロナの感染拡大状況によって日々、条件が変わります。今はまだ国際線から国内線への当日乗り換えはできませんでした。今回のコラムはあくまで参考としていただき、その都度、日本政府や渡航先政府のルールを調べて対応していただければと思います。2022年はもっと簡単に出張できるようになればいいですね。

以上

~前編はこちら~

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許 光英

シニア・プロジェクト・マネージャー 株式会社 電通PRコンサルティング
1991年富士ゼロックス株式会社入社。ビジネスコンサルティングとドキュメントソリューションサービスに従事。 1996年電通パブリックリレーションズ(現電通PRコンサルティング)入社。パブリックアフェアーズ、リスクマネジメント、デジタルコミュニケーションなどのプロジェクトを歴任。 近時は国際情勢分析、経営トップのコミュニケーション、メディア対応などを手がけている。慶應義塾大学文学部(社会学)、ペンシルバニア大学国際関係学部卒業。
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