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【#08:プロジェクト決定のタイミング】~技術者こそ経営者を目指せ!~ イノベーションリーダーが知っておきたい30のチャート

日本能率協会の上席アドバイザーエグゼクティブフェローの五十嵐氏による本連載コラム。
今回のコラムでは、プロジェクトを進める上での不確実度とコストの関係性、また決断と成果(Satisfaction)について説明します。

事業を進める取り組みの中には、プロジェクティブに進めるものが多々あります。例えば下記のようなものでしょう。
・新製品の開発と事業化
・生産設備の建設、再構築
・資本提携やM&A など

これらを成功させるために重要なことは、その実行を「決断するタイミング」です。
この決断の対象とは、プロジェクト全体のこともありますし、プロジェクトを構成するタスクのこともあります。

それでは、プロジェクトというものについて、「トータルコスト」と「不確実度」という観点から分析してみましょう。

プロジェクトのトータルコスト

各プロジェクトにおける、トータルで発生するコストを考えます。
例えば調査、試作、市場性評価、建設費など様々な項目が挙げられますが、それらのコストは時間の経過とともに増加するのが特徴です。

プロジェクトの不確実度

次に、プロジェクトのゴール到達に対する不確実度を考えます。
判断のための各種情報が無い段階ではリスクが大きく、不確実度はかなり大きい状態といえるでしょう。しかし、コストと時間をかけて収集した情報が蓄積するにつれて、リスクが低減され、不確実度は一旦下がります。

ところが、コストと時間をしっかりかければ不確実性を限りなく小さくできる、というわけではありません。時間の経過とともに競合参入の機会が増し、逆にリスクが上がることもあります。

Chart08:プロジェクト決定のタイミング

つまり、不確実度とトータルコストは基本的にトレードオフの関係にあります。

それでもリーダーは不確実性の中で決断しないとならない

プロジェクト(設定したテーマ)は、コストとリスクを相対的に考え、起動を決断することにより開始されます。

一般的なプロジェクト運営では、リスクを恐れるがために、判断が遅れてしまうことが常です。
しかし技術革新が急速に進み、変化が激しい現在は、リスクを明確に認識した上(リスクとその回避に対する仮説を立てる)で、決断しチャレンンジしていくことが必要です。
不確実性やコストのバランスを見極め決断することで、達成時の満足度(Satisfaction)が変わってくるのです。

もしリスクが新たに出現し、見込んだ成果が得られないときには、そのリスクの状況や影響を受け止め、まず冷静に解析すること。
そして仮説を見直し、改善に向けた手立てを取りましょう。 

リーダーは、リスクを見極め決断する力、障害を乗り越え、前に進める推進力、そして結果責任を負う覚悟などの技量を備えることが必要です。

五十嵐 弘司

五十嵐 弘司
1980年に味の素(株)入社、バイオ精製工程のプロセス開発に従事。1998年からアメリカ味の素(株)アイオワ工場長、技術開発センター長を経て上席副社長。2009年、味の素(株)執行役員経営企画部長、その後、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員に就任。
中期経営計画の策定、M&Aの実務実行など、味の素(株)で経営の中枢を担う。また、技術統括・情報統括として、イノベーションの実現、グローバル展開、ICT活用やデジタル化を推進した。
現在、一般社団法人日本能率協会上席アドバイザー エクゼクティブフェロー、公益社団法人企業情報化協会上席顧問 エクゼクティブアドバイザー等を歴任し、日本産業界の再成長にむけ取組み中。
「競争優位を実現する成長戦略と経営基盤」ほか、企業経営に関わる多数の講演実績がある。著書「技術者よ、経営トップを目指せ!」(2019年11月、日経BP)を出版。

近日公開予定のChart(各記事公開後にリンクが貼られます)

Chart01:技術のバリューチェーン
Chart02:生産の2類型
Chart03:事業の2類型
Chart04:事業類型と生産類型の組み合わせ
Chart05:現場の自律性
Chart06:現場を見る視点
Chart07:2種類のPDCA
Chart08:プロジェクト決断のタイミング(本コラム)

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