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シリコンバレー発アルゴリズム革命の衝撃|
【講演レポート】スタンフォード大学 櫛田健児氏 その2

本コラムはスタンフォード大学の櫛田先生に講演いただいた内容を15回にわたり掲載しています。

アルゴリズム革命の衝撃とシリコンバレー:ディスラプションを起こし続ける経済圏 ②

スタンフォード大学 アジア太平洋研究所リサーチアソシエート
櫛田健児 氏

著書「シリコンバレー発アルゴリズム革命の衝撃」について

最近上梓した「シリコンバレー発アルゴリズム革命の衝撃」についてお話しします。

まずはすぐそこまで来ている革命についてです。

シリコンバレーに住んでいますと、いかに革命がすぐそこまで来ているかというのが実感できます。例えばテスラの自動車がものすごい数売れているわけですね。

スタンフォードショッピングセンターは、かつてスティーブ・ジョブズが最初のApple Storeをつくった場所だったのですけれども、ソニーストアもあったんです。いい製品もそろっていて頑張ってたんです。でもあまり人が来てなくて結局店はクローズしてしまいました。その後何の店になるのかなと思っていたらテスラのお店になってしまいました。すぐそのこのショッピングセンターでは車を売っているのです。ですので、テスラはガンガン走っています。

テスラのオートパイロット(自動運転)もずいぶん早く富裕層に取り入れられました。1千万円以上する高級車なのでそこそこ富裕層ではないと買えないものです。そのような人達が喜んで命を預けて、オートパイロット(自動運転)に託しますと。

2008年には潰れそうだった会社だったのに、自動運転を導入した瞬間にみんながとびついたのです。最初こそ、YouTubeの自撮りで手放し運転はもちろんのこと、ギターを弾きながらとか、ご飯食べたりとか仮眠をとったりとか、行き過ぎたアピールも目について、行政当局から「運転時は一応ハンドルに手を沿えてください」と指導が入るほどでしたが、とにかくいち早く新技術を利用しようというリードユーザーがいっぱいいるような地域がこのシリコンバレーなのです。特にGoogle本社に近いマウンテンビューなどではごく普通に、完全自動運転の車が走っています。

スタンフォード大学の大学院生は当初はだいたい車を所有しているのですが、1年目で売ってしまう人が多いんですね。その背景にUBERの普及があります。

車がなくて、UBERに年間いくら使ってるか聞いてみると、だいたい8千ドルぐらいから1万ドルぐらいと言います。そんなに使ってペイするのか疑問に思いますが、結局、ガソリンを入れる時間や駐車場探す時間、キャンパス内には駐車場がなかなかなく、また駐車券も高い。ましてや、サンフランシスコみたいなところに行こうと思ったらさらに高くなり、非常に不便な面があります。簡単な買い物だったらUBERの方が手軽だという考え方があります。メンテナンスにかかるお金や、オイルチェンジの時間なども車を保有していると派生する面倒な問題でもあります。

結局、時間がもったいないのです。すぐそこまで来ている革命の本質は、希少リソースから豊富なリソースへと変換するプロセッシングパワーになっているのです。そのことを本当に活用していくのはこれからです。

なぜ革新的な技術やビジネスモデルのディスラプション(崩壊・混乱)が、シリコンバレーで起こっているのでしょうか。それはいつまで続くのか。シリコンバレーのようなエリアをどこかにつくりましょうと全世界で色んな人がやって来て同じことを尋ねます。

私がいつも答えるのは、日本国内でシャッター街になってしまい廃れている「何々銀座」という駅前の通りがありますが、何々銀座が本家の銀座を超えることがないように、シリコンバレーを超える何々シリコンバレー構想、がシリコンバレーを超えることはおそらく無理ではないかと思っています。

いろんな補完関係の中で成立しているシリコンバレーの、それの1つか2つの要素をちょっとだけ持ち寄ってもおそらくうまくいかないんです。全てが揃っていなくてはならないのです。

全部を移し替えられないなら、コピーペーストしようと思っても、それは劣化コピーに過ぎず、それだったら複製はやめましょうと私は言いたいのです。

ワーストプラクティス(悪い事例)をあらかじめ避けてシリコンバレー活用しましょうというのが、著書でも述べている目指すべき着地点です。

講演時のプレゼン資料は下記よりダウンロード頂けます。
https://event.jma.or.jp/algorithm_revolution

櫛田 健児

櫛田 健児
スタンフォード大学アジア太平洋研究所
Research Scholar

1978年生まれ、東京育ち。父親が日本人で母親がアメリカ人の日米ハーフ。2001年6月にスタンフォード大学経済学部東アジア研究学部卒業(学士)、2003年6月にスタンフォード大学東アジア研究部修士課程修了、2010年8月にカリフォルニア大学バークレー校政治学部博士課程修了。情報産業や政治経済を研究。現在はスタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員、「Stanford Silicon Valley – New Japan Project」のプロジェクトリーダーを務める。おもな著書に『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』(朝日新聞出版)、『バイカルチャーと日本人 英語力プラスαを探る』(中公新書ラクレ)、『インターナショナルスクールの世界(入門改訂版)』(アマゾンキンドル電子書籍)がある。

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