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AIの流れ|
【講演レポート】スタンフォード大学 櫛田健児氏 その8

本コラムはスタンフォード大学の櫛田先生に講演いただいた内容を15回にわたり掲載しています。

アルゴリズム革命の衝撃とシリコンバレー:ディスラプションを起こし続ける経済圏 ⑧

スタンフォード大学 アジア太平洋研究所リサーチアソシエート
櫛田健児 氏

AIの流れ

AIというのはその延長上にある流れに乗っているといえます。
1880年代から機械式計算機が発明されて戦後まで使われていましたが、情報の蓄積能力と処理能力をそのような計算機で行っていて、1950年代頃は、NASAのトップの科学者がこれの機械を使って、水爆つくっています。
その後、スーパーコンピューターがようやく出てきて、ついに半導体が発明されてIBM1955年のスーパーコンピューターができたらメモリは当時10キロバイト。私も当時Macで10キロバイトのExcelファイル探したら50名分の名前・所属・メルアドこれぐらいでした。そのようなものです。その後、ハードディスクが発明されました。
冷蔵庫よりも大きいハードディスク5メガバイト。2005年最初出た時は私も感動したものです、128メガバイトのmicroSDがこんなに小さくなったと。128ギガのやつが一昨年普通に出回っていましたが、9年たったらあっという間に1,000倍になっていました。

ちなみに来年にはメモリが倍になるとわかっています。例えばスタンフォードでもヒトゲノム分析の研究などでは、今計算できるところはこれだけ、ここのところはまだちょっとできないけど、これはあとでできるという、再来年できると仮定してそのアウトプットをプラグインできるようなプロジェクト設計というのは普通にやっています。そのプロセッシングパワーが足りないからこれができません、というのも技術的には理由になってないのです。

AIとIA労働はどうなるかという議論、冒頭に少し申し上げましたけれども、よく聞く議論ではAIが台頭するとこのような仕事が失われますと言われます。ローエンドの労働が自動化されるので、みんなハイエンドになりましょうという議論があります。いろんな仕事を並びあげて、この仕事は自動化される、この仕事は自動化されると足し算をしていくので、5年後には70ミリオンぐらいチップがなくなりますとやたら具体的な数字が出てくるのでけど、この考え方は完全におかしいですね。

といいますのも、AIの設計パラダイムには人間を視野に入れないAIとあくまで人間を高めるようなIA、インテリジェンスオグメンテーション、この2つの大きなパラダイムを視野に入れなければいけません。IAというのはローエンドのロースキルの人に、ハイエンド、ハイスキルの仕事をさせるような仕組みですね。

今実用化していてアメリカでもこのへんで話すと人気のコマツの例ですが、初心者でも熟練の技ができるようになるような仕組みですね。例えば斜面を円の動きで掘らなきゃいけないのは10 年ぐらいの熟練がなきゃできないらしいのですが、いろんなところにセンサーをつけることによって3Dマッピングをドローンから撮ったものを元に分析し、初心者でも誤差なく測量できるようになりました。

ディープマインドについても、CTスキャンの解析をお医者さんと比べた実験があります。ディープマインドのほうが解析の正解率が高かったという結果が出ました。これまで熟練が必要とみなされていたハイエンドの仕事でも初心者ができるようになります。
そうなると、医者は失業するのか、となりますが、そうではありません。これまで限りのあった手術数が増えたり、もうちょっと睡眠をとってミスを減らすとか、それによって色々できることが増えるわけです。

講演時のプレゼン資料は下記よりダウンロード頂けます。
https://event.jma.or.jp/algorithm_revolution

櫛田 健児

櫛田 健児
スタンフォード大学アジア太平洋研究所
Research Scholar

1978年生まれ、東京育ち。父親が日本人で母親がアメリカ人の日米ハーフ。2001年6月にスタンフォード大学経済学部東アジア研究学部卒業(学士)、2003年6月にスタンフォード大学東アジア研究部修士課程修了、2010年8月にカリフォルニア大学バークレー校政治学部博士課程修了。情報産業や政治経済を研究。現在はスタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員、「Stanford Silicon Valley – New Japan Project」のプロジェクトリーダーを務める。おもな著書に『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』(朝日新聞出版)、『バイカルチャーと日本人 英語力プラスαを探る』(中公新書ラクレ)、『インターナショナルスクールの世界(入門改訂版)』(アマゾンキンドル電子書籍)がある。

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