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変革の流れを侮ってはいけない|
【講演レポート】スタンフォード大学 櫛田健児氏 その4

本コラムはスタンフォード大学の櫛田先生に講演いただいた内容を15回にわたり掲載しています。

アルゴリズム革命の衝撃とシリコンバレー:ディスラプションを起こし続ける経済圏 ④

スタンフォード大学 アジア太平洋研究所リサーチアソシエート
櫛田健児 氏

変革の流れを侮ってはいけない

ディスラプション(崩壊)の流れを過小評価したCEOが、例えば「Googleは本当の会社ではない。ハッタリだ」というようなことを言っていた時期もありました。iPhoneについては「500ドルなんて高いし、キーボードもないからメールも打てないし、ビジネスユーザーに不向きだ」と、言っていたCEOもいました。

しかし結果は、それら新しいものの登場を甘く見ていたら市場を根底から覆すような流れになっていった。「ネットフリックスなんて我々の競争の眼中にない」と言っていた人も、当時から眼中に入れいてたほうがよかったと思います。

ブロックバスターはこのあと潰れました。今マーケットシェア0のモトローラの当時CEOは当時、iPadのことを揶揄して「1,000曲なんて聞く人いない。そんなものはいらない」と言っていました。

このようにみんなディスラプト(崩壊)されているのです。

ところで、シリコンバレー企業はアメリカのトップはもちろんのこと、世界のトップの時価総額であり、時価総額は株価が暴落したら落ちますよね。しかし、現金保有で世界のトップ20社ぐらい見ると、それもまたその半数以上がシリコンバレーの会社なのです。

世界で1番キャッシュを保有している会社はAppleで、3番目ぐらいがGoogleです。

本当のバリューはシリコンバレーから生まれているのです。

この間Amazonがホールフーズというかなりハイエンドのスーパーチェーンを買ったんですけれども、日経新聞の見出しでは「ネット企業からリアルへ」などとなっていました。ネット企業っていう考え方もちょっとどうかなと思いました。AmazonとGoogleとMicrosoftというのは巨大設備投資の上に成り立っている企業です。

彼らのデータセンターは1つ1千億円以上を軽く超えています。そのデータセンターを2桁台世界中持っているわけです。ネットというイメージで軽い、と思っていたら大間違いで、重厚な設備投資のうえに成り立っている企業なのです。
世界で最も多くコンピュータを製造しているのはGoogleです。

Googleが自社のデータセンター内にコンピュータをアッセンブリーし、最近では半導体まで設計しています。

AIに向けたCPUのことですが、そういうものまで設計していますし、Appleも自前のiPad用の半導体を設計しています。優秀な半導体エンジニアをちゃんと自社で持っているわけです。

これからのAI革命については、日本しばらくいて気になったのが、バズワードとして語られることが多くなっていることです。IoT・FinTech・ブロックチェーン・AI・シェアリングエコノミー・プラットフォーム・クラウドコンピューティング・エッジコンピューティングなどいろいろありますが、現在はAIがバズってます。

バズワードになっていと、本質が見えなくなる恐れがあります。

例えば今何かのサービスを売ろうと思ったら「我々はAIで分析しています」などと謳います。何かを分析するのだったら「AIで」というのを入れないと売れないわけですね。例えば「AIじゃないんですけど普通のアルゴリズムでものすごくよく分析できています」と言っても「AIで」とやらないとマーケティング的にはダメなのです。

そうなると今度は、AIという名前自体が「どうっていうことない。こんなものなのか」や「AIってそんなに大したことじゃないのではないか?」という風になっていくのです。

そこの怖いところは、本当のAIの力というものが、AIというラベルのついたマーケティングの都合によって、本質とかけ離れた解釈をされてしまうという危険があります。本質が見逃されてしまうのです。

そうすると本当のAIの時代がやってくるときに、本質を理解していなかったがために、全てを持っていかれてしまう危険性があります。

あともう1つ、見えにくい文脈としてAIがなぜ今のタイミングで急速に発展して、これからどのように改革を起こそうとしているのか、という流れがあまり理解されていません。機械が人を超えてターミネーターの世界になってしまうのか、すべての問題をAIが解決してくれる、これも普通に考えたらありえないんじゃないのというように、両極端な議論が目立ち、地に足がついた議論があまりされていません。

講演時のプレゼン資料は下記よりダウンロード頂けます。
https://event.jma.or.jp/algorithm_revolution

櫛田 健児

櫛田 健児
スタンフォード大学アジア太平洋研究所
Research Scholar

1978年生まれ、東京育ち。父親が日本人で母親がアメリカ人の日米ハーフ。2001年6月にスタンフォード大学経済学部東アジア研究学部卒業(学士)、2003年6月にスタンフォード大学東アジア研究部修士課程修了、2010年8月にカリフォルニア大学バークレー校政治学部博士課程修了。情報産業や政治経済を研究。現在はスタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員、「Stanford Silicon Valley – New Japan Project」のプロジェクトリーダーを務める。おもな著書に『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』(朝日新聞出版)、『バイカルチャーと日本人 英語力プラスαを探る』(中公新書ラクレ)、『インターナショナルスクールの世界(入門改訂版)』(アマゾンキンドル電子書籍)がある。

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