【魚眼 虫眼 鳥瞰】 「自由闊達」 な組織をめざそう 付加価値を高める働き方改革へ
月刊情報誌『JMAマネジメント』の連載記事の一部をご案内いたします。
昨年は、働き方改革を掲げる動きが多く見られた。社会的な関心も高まり、大きく前進した年であったといえよう。
日本は、人口減少に伴い、いまの生活を維持するためには、働くことができる「人」と「機会」を増やさねばならない。そして何よりも、1人あたりの労働生産性を向上させることが求められている。こうした背景は、誰もが知るところである。
だが、いまの働き方改革は、本当に従業員と企業そして社会にとって、価値ある改革内容になっているであろうか。
ここで労働生産性向上について基礎的なことを振り返っておきたい。
国際比較における労働生産性は、「労働生産性=GDP(国民総生産)÷就業人員×労働時間」である。OECD加 盟35カ 国 中 で、日本は22位(2015年)。1970年からの調査で、1990年に16位にまで上昇したが、20位前後を上下しているのだ。
しかも、時間あたりの労働生産性から見ると、日本は26位。主要先進7カ国のなかでは最下位で、アメリカの6割強程度しか達成できていない。
こう見ると、単なる残業時間削減では、まったく歯が立たないことがわかる。無駄な業務や不要な仕事をやめ、定型業務はIT化を進め、労働時間を短くし、付加価値を生み出す仕事に転換することがめざすべきところである。
また、これまでIT化を各国とも進めてきたが、日本はIT化によって労働生産性は向上していない。横ばいで、作業が楽になったぶん、付加価値向上に直結しない仕事を生み出してしまっていたのではないだろうか。
あらためて考えたいのが、「労働生産性=アウトプット(組織が生み出す付加価値)÷インプット(従業員人数×労働時間)」という公式である。
いまの働き方改革は、分母を少なくする改革である。次のステージでは、分子にあたる付加価値を向上する改革をめざさなければならない。
付加価値を高めるためには、すでにさまざまな打ち手がある。たとえば、ダイバーシティ、シニア活用、標準化業務の機械化、オープンイノベーション、共創などである。こうした打ち手をもっても成果をなかなか出せないのは、つまるところ、自らも気づいていない意識や行動を変えられていないからである。
ソニーの創業者のひとりである井深大氏は、「自由闊達」という言葉を使った。いまこそ、新しいものをつくり出せる自由闊達さが日本の組織に求められている。