【#09:海外赴任のポイント】~技術者こそ経営者を目指せ!~ イノベーションリーダーが知っておきたい30のチャート
日本能率協会の上席アドバイザーエグゼクティブフェローの五十嵐氏による本連載コラム。
今回のコラムでは、企業のグローバル化には何が必要か、どんな人材が求められるかについて、五十嵐氏のチェックリストを紹介します。
企業のグローバル化は、人材のグローバル化そのものです。
日本企業がグローバル展開するためには、派遣される人材がグローバルな視点を持ち、活動する必要があります。
現地における自分のミッションを明確に持つ
↓
その実現に向けて、現在の自分の能力を客観的に見つめなおす
↓
何が不足しているのか(=課題)を考え、補う
海外赴任する人材が自分自身でこのループを回していくことが、海外業務の場でより充実した成果をあげることにつながります。
ここで、海外赴任する人材に私が送るポイントを、チェックリスト形式でご紹介します。
Chart09:海外赴任のポイント
全てに通じるポイントは、
「海外で行う全ての活動においては、駐在地の風土・風習・文化、価値観が日本とは全く異なることが多く、その為に日本の常識で物事を考えてはいけない」
という事です。
各項目についてのコメントを掲載し、今回のコラムのまとめとしたいと思います。
海外駐在生活をおくるにあたって心がけるポイント
駐在地の風土・風習・文化、価値観に染まることはグローバル化への第一歩であり、語学はあくまでも「コミュニケーションの道具」と考え、それよりも何をする(したい)かが大切であることを心がけましょう。
グローバル化に対応するポイント
日本の立場から世界を見ないことが大切です。
「脱日本」という意識と「世界の中に日本がある」という実感を持ちましょう。
日本では、行動の原点に “相対優位性の追求” をおくことが多く、グローバルでは、“絶対価値を追求”する行動が多く見られることもあらかじめ心に留めておくとよいでしょう。
多様な価値観を認め、下記のような公平性・受容力を養うことも重要です。
・脱日本流の価値観(日本の価値観は世界共通でない)で思考する
・人、文化、地域に対し尊厳をもち、常に謙虚さを保つ
・差別する意識を排除する
また、「地球はひとつ、 世界全体の幸せと発展に尽くす志をもつ」という世界観も持てるようになるとよいでしょう。世界中のどこかで破壊が起きれば世界全体が破滅するという危機感や、Sustainabilityを追求する姿勢も求められます。
海外で働くにあたって心がけるポイント
多くの場合、海外赴任する人材は大きな役割と権限を得ます。その一方で、内向きな発想を排除し、健全な世界観、公平感をもって業務にあたることが求められます。
全ての起点はローカルが発展することにあることを体感する好機となるでしょう。
また現地では、日本の看板を背負っていることを時に意識しながらも、ローカルでの友好関係は積極的に構築していきましょう。その際に、社内の価値観を無理にあてはめないことが大切です。
そして、赴任者には日本への報告が義務付けられるので、報告する事・伝える事を考え、内容は簡潔に適切に報告しましょう。
海外で働く方に望まれていること
一言でいうと「Global – Frontier になること」だと思います。
多様性を認め、管理・維持ではなく、拡大・発展を考え行動し、自らの判断と決断を大切にする“日本企業のグローバル化に資する人材”であってほしいと考えています。
五十嵐 弘司
1980年に味の素(株)入社、バイオ精製工程のプロセス開発に従事。1998年からアメリカ味の素(株)アイオワ工場長、技術開発センター長を経て上席副社長。2009年、味の素(株)執行役員経営企画部長、その後、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員に就任。
中期経営計画の策定、M&Aの実務実行など、味の素(株)で経営の中枢を担う。また、技術統括・情報統括として、イノベーションの実現、グローバル展開、ICT活用やデジタル化を推進した。
現在、一般社団法人日本能率協会上席アドバイザー エクゼクティブフェロー、公益社団法人企業情報化協会上席顧問 エクゼクティブアドバイザー等を歴任し、日本産業界の再成長にむけ取組み中。
「競争優位を実現する成長戦略と経営基盤」ほか、企業経営に関わる多数の講演実績がある。著書「技術者よ、経営トップを目指せ!」(2019年11月、日経BP)を出版。
近日公開予定のChart(各記事公開後にリンクが貼られます)
Chart09:海外赴任のポイント(本コラム)
Chart10:コストダウンとコストカット
Chart11:国内と海外の生産マネジメント①
Chart12:国内と海外の生産マネジメント②
Chart13:国内と海外の生産マネジメント③
Chart14:技術情報 漏洩防止対策