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【#12:国内マザー機能工場の役割】~技術者こそ経営者を目指せ!~ イノベーションリーダーが知っておきたい30のチャート

日本能率協会の上席アドバイザーエグゼクティブフェローの五十嵐氏による本連載コラム。
今回のコラムでは、前回の「グローバル生産体制の構築」に続く形で、マザー機能工場の役割についてご紹介します。

国内生産の場で培った技術やノウハウは、生産の原点であり、また将来に向け生産を進化させる源でもあります。

海外工場が複数できてきた場合、それら海外工場の起源や模範、さらに指導的な立場でもある工場を「マザー機能工場※」と呼びます。
この「マザー機能工場」では、基幹技術を保持し、さらにそれらを進化させる大切な役割を負うことになります。

マザー機能工場に必要な要素とは

グローバル生産体制を考える上で最も重要なことは、サステナブルな生産機能の維持とその進化です。
そのためには、それを支える人材が継続的に育成されていることが必要です。
バリューチェーンの川上となる研究活動の中心、さらにその取りまとめは国内で実施されていることが多く、その連続性や企業の戦略を無理なく実現する観点からも、「マザー機能工場」は国内にあることが望ましいと考えられます。

これらの特徴を考えると明白な通り、国内マザー機能工場に期待されることは、海外工場とは異なり、生産機能のみに特化することではありません。
国内マザー機能工場の役割について、表にまとめました。

Chart12:国内マザー機能工場の役割

製造コストのみで国内外の工場を比較するなかれ

国内工場と海外工場の生産を「製造コスト」で比較し、国内工場での生産が競争力を失うケースがあります。
しかし、この考えは国内工場と海外工場のコストが単に同じ生産機能の上にあるとの前提に立ち比較されている可能性があるため、注意が必要です。

マザー機能の価値、すなわち技術開発機能や人材育成のポテンシャルやインフラをどの程度に評価するかによって、コスト評価の基準が大きく異なることを心する必要があります。

製品が成熟化し、もはやコストダウン、新たな技術開発、製品開発が必要ないと判断したときには、国内マザー機能工場は不必要という判断もあります。
逆に、製品が進化・成長を続けている場合や基幹技術として保持すべきものがある場合には、国内マザー機能工場が必要となり、そこで作られる製品のコストについては、その価値を受け止める必要があるのです。

※マザー機能工場:サステナブルな生産を実現するために、必要な要素を集約し、さらにそれらを進化させる役割を持つ工場

五十嵐 弘司
1980年に味の素(株)入社、バイオ精製工程のプロセス開発に従事。1998年からアメリカ味の素(株)アイオワ工場長、技術開発センター長を経て上席副社長。2009年、味の素(株)執行役員経営企画部長、その後、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員に就任。
中期経営計画の策定、M&Aの実務実行など、味の素(株)で経営の中枢を担う。また、技術統括・情報統括として、イノベーションの実現、グローバル展開、ICT活用やデジタル化を推進した。
現在、一般社団法人日本能率協会上席アドバイザー エクゼクティブフェロー、公益社団法人企業情報化協会上席顧問 エクゼクティブアドバイザー等を歴任し、日本産業界の再成長にむけ取組み中。
「競争優位を実現する成長戦略と経営基盤」ほか、企業経営に関わる多数の講演実績がある。著書「技術者よ、経営トップを目指せ!」(2019年11月、日経BP)を出版。

近日公開予定のChart(各記事公開後にリンクが貼られます)

Chart09:海外赴任のポイント
Chart10:コストダウンとコストカット
Chart11:グローバル生産体制の構築
Chart12:国内マザー機能工場の役割(本コラム)
Chart13:国内と海外の生産マネジメント③
Chart14:技術情報 漏洩防止対策

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