プロセッシングで注意を払うべきこと|
【講演レポート】スタンフォード大学 櫛田健児氏 その14
本コラムはスタンフォード大学の櫛田先生に講演いただいた内容を15回にわたり掲載しています。
アルゴリズム革命の衝撃とシリコンバレー:ディスラプションを起こし続ける経済圏 ⑭
スタンフォード大学 アジア太平洋研究所リサーチアソシエート
櫛田健児 氏
プロセッシングで注意を払うべきこと
プロセッシングパワーについてお話しします。
近頃はプロセッシングパワーが拡充してきていて、よくあるITベンダーは貴社にカスタマイズしますと謳っています。そのサービスのカスタマイズ方法が自社に適しているか適していないか、きちんと見極めていますか?
あるプロセスをベンダーに振ったとして、その浮いた分の時間であなたはどこで儲けようとしていますか、という点をもっと明確にする必要があります。あなたがあなたの組織で、どこの部分で1番集中しようとしているのですかという点が問われるのです。
最近衝撃だったのは、自分も大学でGmailを使っているのですけど、そこにフリーメールが来るようになってついに(日本の)大手銀行が事前登録している以外のGmailアドレスの使用がダメになりました。メールが届かないのです。つまりGmailイコールフリーメールとなり、フリーメールは危ないものとシステムウェアの専門家が判断しているわけです。その根拠として、Gmailはそもそもメールを発信する前にマルチウェアにチェックをしています。Googleのセキュリティに関していえば、数年前に暗号化の問題でハッキング結構やられてかなり危ないところまでいきました。これは暗号化プロセスに問題があったからでした。
当時Googleのラリー・ページとセルゲィ・ブレインは、当時世界にいるとされた暗号化に関する世界の中枢に位置する専門家を100人ぐらい全員一気に雇おうとしました。金に糸目をつけず、英語式の言い方をするとシリコンバレー中で掃除機(トップの専門家を吸引するバキューム)の音がしたといわれています。
そもそもGoogleは、1秒間に何万回もハッキング受けているというような状態ですが、それが最初から1度も破られたことはないといいます。そのような背景もあり、フリーメールが危ないという考え方は違うんのではないかと考えられていたわけです。例えば日本国内のベンダーが供しているセキュリティとGoogleが行っている対策ではどちらがすごいのですかと聞いたとします。Googleのほうが、容量もセキュリティもしっかりしているのではないかと考えます。
しかしそこで大きい問題があります。それがセキュリティの問題です。
よくあるどうでもないファイルでも、次のメールでパスワードが届きます、という事がありますが、同じメールアドレスで届くので、これはセキュリティの面からいいますと妥協しているわけです。本当にパスワードでロックをかけなくてはいけないものだったら、セキュリティ上同じメールアドレスに送るのは絶対に避けるべきで本来であれば全く違う宛先に、別のフォーマットで送るべきなのですね。ただし、そこは銀行でもワンタイムパスワードで妥協しているのです。
ただし、今申しあげたとおりこれではセキュリティは全然確保されてないわけです。
同じメールアドレスに送付されているので意味がない、いったい何をしているんですか、ということです。何十億円単位の金額が動くディールにおいて、そのやりとりのツールのセキュリティがぜい弱では当然まずいわけです。そのまずいシステムというのは、設計した時点で色々妥協があるので、そのプロセスに注意を払う必要があったわけです。ですので、もし発注する側の企業だったら、このようなことは頭に入れておいた方がいいと思います。
例えば、航空会社の社員が実証実験で基幹システムには触れずにお客様に関するデータが手元にあって、このデータを別のデータと照らし合わせてある処理をかけたら、何がみえてくるか。このようなことになると、統計学を専門的に学んだわけではないからよくわからないという事態が起こります。せっかく手元にあるツールでこのデータがこのように使えます、と教えてくれるぐらいのレベルはあるべきですし、そのようなツールを扱うことをビジネスとする会社はどんどん出てくると思います。
統計をうまく扱える企業は、例えばこれから白物家電がAIの時代になってきたら、それに伴いツールもたくさん出てきますので、社内の組織としてこの流れにどう対応していくか、(スタンフォード大学の)アジア太平洋研究所ではシミュレーションなども行っています。ちなみにシミュレーションとしてディープマインドは月額10ドルで使えるようにまでなりました。
講演時のプレゼン資料は下記よりダウンロード頂けます。
https://event.jma.or.jp/algorithm_revolution
櫛田 健児
スタンフォード大学アジア太平洋研究所
Research Scholar
1978年生まれ、東京育ち。父親が日本人で母親がアメリカ人の日米ハーフ。2001年6月にスタンフォード大学経済学部東アジア研究学部卒業(学士)、2003年6月にスタンフォード大学東アジア研究部修士課程修了、2010年8月にカリフォルニア大学バークレー校政治学部博士課程修了。情報産業や政治経済を研究。現在はスタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員、「Stanford Silicon Valley – New Japan Project」のプロジェクトリーダーを務める。おもな著書に『シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃』(朝日新聞出版)、『バイカルチャーと日本人 英語力プラスαを探る』(中公新書ラクレ)、『インターナショナルスクールの世界(入門改訂版)』(アマゾンキンドル電子書籍)がある。