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【#01:技術のバリューチェーン】~技術者こそ経営者を目指せ!~ イノベーションリーダーが知っておきたい30のチャート

今回から、日本能率協会の上席アドバイザーエグゼクティブフェローの五十嵐氏による連載コラム「今、技術者がイノベーションを起こすために必要な30のチャート」が始まります。
第1回目は、研究・技術・開発の位置づけを示した「技術のバリューチェーン」。このバリューチェーンを深く理解することで、各要素における適正なマネージメントや、経営資源の適切な配分、事業の進化を考える基礎を築くことが可能となります。

「研究」と「技術」の使い分け

私たちは、「研究」と「技術」を無意識のうちに使い分けています。

たとえば、「日本の多くのメーカーは、技術立社を掲げている」と言いますが、技術立社の代わりに研究立社とは表しません。
同様に、「日本では、研究に力を入れノーベル賞を受賞する機会が増した」と言いますが、ここでは、研究の代わりに技術という言葉は使いません。

技術革新が急速に進み、イノベーションを起点に企業の成長が望まれているこの時こそ、時には混同して用いてしまう「研究」(Research)と「技術」(Technology)の意味するところをしっかり理解し、そして「生産」との関係をも明らかにすることが大切です。

 

「研究」「技術」「生産」の違い

「研究」は知の創造であり、「技術」はその知を産業に適用させること、そして「生産」は「技術」で具体化された結果を用いて〝ものをつくる〟ことを指します。

そして、「研究」、「技術」と「生産」は一直線で繋がる価値創造の活動であるため、バリューチェーンと考える事ができます。
この3つの機能のつながりである「技術のバリューチェーン」は、事業を成立させ、さらに発展進化させる重要なはたらきを担っています。

 

技術のバリューチェーン

Chart01:技術のバリューチェーン

「技術のバリューチェーン」で、成果を得る期待度(成功確率)は3つの機能により異なります。

「研究」においては発見・創造が重視され、その成功率は、研究領域によって期待度は異なりますが、決して高い成功率を目指すものではありません。
例えば「10のテーマを行って1テーマでも次につながる結果や発見」があれば上出来です。

一方、「技術」は、「研究」で得た結果を産業化する検討プロセスと捉えると、研究結果の工業化検討であると同時に、市場の受容性や要求も含め評価することになります。
「技術」では、7割程度の達成が得られれば満足すべきでしょう。

これに対して「生産」の成功率は100%を求められています。
「生産」ではお客様が満足する製品をつくることが目的なので、不良品は不可となり、わずかな失敗も許されません。

 

「研究」「技術」「開発」から得られる結果の適用性

「研究」から得られた結果は、ひとつの領域や特定の事業に活用されるだけではなく、他の領域や多くの事業に活用できることが多くあります。
研究の結果には一般性があるため、その適用範囲は広範に及ぶと考えられます。

一方で、「技術」の結果は、限られた分野や事業を前提に検討を行うため、結果の適用範囲は、ターゲットに定めた領域に限定的となります。

また「生産」の結果は個別の生産物そのものであるため、結果は特定されるのです。

このように、成功確率と結果の適応性の両方を意識しながら、技術のバリューチェーンをデザインしていくことが重要です。

五十嵐 弘司

五十嵐 弘司
1980年に味の素(株)入社、バイオ精製工程のプロセス開発に従事。1998年からアメリカ味の素(株)アイオワ工場長、技術開発センター長を経て上席副社長。2009年、味の素(株)執行役員経営企画部長、その後、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員に就任。
中期経営計画の策定、M&Aの実務実行など、味の素(株)で経営の中枢を担う。また、技術統括・情報統括として、イノベーションの実現、グローバル展開、ICT活用やデジタル化を推進した。
現在、一般社団法人日本能率協会上席アドバイザー エクゼクティブフェロー、公益社団法人企業情報化協会上席顧問 エクゼクティブアドバイザー等を歴任し、日本産業界の再成長にむけ取組み中。
「競争優位を実現する成長戦略と経営基盤」ほか、企業経営に関わる多数の講演実績がある。著書「技術者よ、経営トップを目指せ!」(2019年11月、日経BP)を出版。

近日公開予定のChart(各記事公開後にリンクが貼られます)

Chart01:技術のバリューチェーン(本コラム)
Chart02:生産の2類型
Chart03:事業の2類型
Chart04:事業類型と生産類型の組み合わせ
Chart05:現場の自律性
Chart06:現場を見る視点
Chart07:2種類のPDCA
Chart08:プロジェクト決断のタイミング

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