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【#03:事業の2類型】~技術者こそ経営者を目指せ!~ イノベーションリーダーが知っておきたい30のチャート

日本能率協会の上席アドバイザーエグゼクティブフェローの五十嵐氏による本連載コラム。
第2回の「生産の2タイプ」に続き、第3回となる今回は「事業の2タイプ」を紹介します。
「生産の2タイプ×事業の2タイプ=産業のかたち」を決定づける第4回(公開は7月上旬)につながる内容です。

事業における2つのタイプ

生産に2類型があるように、企業および消費者どうしの取引の形態(ビジネス、あるいは事業と称する)もいくつかの種類があります。
代表的な例としてBtoB、BtoC ビジネスがあり、前者は企業と企業間、後者は企業と消費者間の取引を指します。
当然、自社のビジネスがどちらか(またはどちらも)は把握していると思いますが、
ポイントは、BtoBビジネスとBtoCビジネスで、その収益を上げる構造が異なることです。

事業戦略を立案する際に考慮すべき損益構造の考え方とは?

各ビジネスの利益構造(損益構造)は、
「財務会計(ケース1)」および「管理会計(ケース2)」
の2つの考え方があります。

Chart03:事業の2類型

ケース1は、過去の実績を外部に説明するための管理であり、
ケース2は、将来の企業内の戦略を考える上で有用な考え方となります。
かつては事業管理にケース1の考え方が用いられていましたが、戦略を考える上ではケース2のほうが有用です。

BtoCビジネスの利益デザイン

BtoC ビジネスの最大のポイントは、消費者のブランドの消費者認知です。
ブランド認知をされるまでは時間およびコストがかかりますが、
ひとたびブランドが確立されるとトップラインの成長が期待でき、売上原価に利益をプラスした売値の設定が可能です。
また、売上から売上原価を差し引いた売上総利益(GP)の中から、販売費および一般管理費(SGA)をコントロールすることで、利益をデザインできます。

BtoBビジネスの利益デザイン

一方、BtoBビジネスは、ブランド力が大きな要素ではありません。
多くのケースでは、顧客企業に対しての交渉力が弱く、競合間でも通常プライスリーダーが存在します。
そこにおいて利益を上げる為には、売値をコントロールするとともに、変動費、固定費コストの削減が重要となります。
特に成熟~衰退期を迎えるとコモディティー化によるコスト競争に陥るため、固定費を削減し、損益分岐点を下げることが重要になります。
しかし、競争優位性を獲得し大きな市場占有率を獲得した場合(いわゆる「ストロングナンバーワン」または「モノポリー戦略」が実現したとき)は、持続的に安定した利益を確保する事業モデルをつくることができます。

産業を「生産類型×事業類型」で見て、戦略を分ける

ここからは次回の内容になりますが、
第2回で見てきた「生産の2類型」と、今回の「事業の2類型」をクロスでとらえ、それぞれに戦略を立てることが重要です。
詳細は次回のコラムをご覧ください。

五十嵐 弘司

五十嵐 弘司
1980年に味の素(株)入社、バイオ精製工程のプロセス開発に従事。1998年からアメリカ味の素(株)アイオワ工場長、技術開発センター長を経て上席副社長。2009年、味の素(株)執行役員経営企画部長、その後、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員に就任。
中期経営計画の策定、M&Aの実務実行など、味の素(株)で経営の中枢を担う。また、技術統括・情報統括として、イノベーションの実現、グローバル展開、ICT活用やデジタル化を推進した。
現在、一般社団法人日本能率協会上席アドバイザー エクゼクティブフェロー、公益社団法人企業情報化協会上席顧問 エクゼクティブアドバイザー等を歴任し、日本産業界の再成長にむけ取組み中。
「競争優位を実現する成長戦略と経営基盤」ほか、企業経営に関わる多数の講演実績がある。著書「技術者よ、経営トップを目指せ!」(2019年11月、日経BP)を出版。

近日公開予定のChart(各記事公開後にリンクが貼られます)

Chart01:技術のバリューチェーン
Chart02:生産の2類型
Chart03:事業の2類型(本コラム)
Chart04:事業類型と生産類型の組み合わせ
Chart05:現場の自律性
Chart06:現場を見る視点
Chart07:2種類のPDCA
Chart08:プロジェクト決断のタイミング

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