【#05:現場の自律性】~技術者こそ経営者を目指せ!~ イノベーションリーダーが知っておきたい30のチャート
日本能率協会の上席アドバイザーエグゼクティブフェローの五十嵐氏による本連載コラム。
今回のコラムでは、工場や生産現場がどのような環境の中に存在しているのか、また周囲とどのように関係構築をしていくべきかに注目します。
製造業において、工場やその生産現場は、言わずもがな事業の要です。
バリューチェーンの大きな要素を握る工場や生産現場は、社内外とどのような関係性の中で存在しているのでしょうか。
工場や生産現場とは、どのような場所か
もちろん工場や生産現場は、事業戦略や利益をコントロールする事業部門だけに属しているわけではありません。
極端な例となりますが、仮に「工場や生産現場=事業部門の所有物」と位置づけてしまった場合、
・事業部門から下請け的な扱いを受ける
・事業部門から無理な要請を受け続ける
などの可能性が考えられ、生産現場から活力が失われる結果となりかねません。
社外から工場・生産現場を見た場合、雇用や、人と物の交流の場という意味では「地域社会を構成する一員」であり、生産に関わる経済活動という意味では「大きなお金が動く場」でもあり、その存在感は偉大です。
また、社内から工場・生産現場を見た場合、その存立は、企業内の多岐にわたる機能部門の関係と支えにより成り、各部門のクロスセクションでもあります。
Chart05:生産現場を取り巻くもの
生産現場のミッション=確かなものづくりを行うこと
生産現場のミッションを考えてみると、「安全」、「製品品質」、「環境保全」などの重要な責任を全うしたうえで、生産のための最適な運転状態を持続的に実現し、結果として『確かな「ものづくり」を行うこと』にあります。
この考え方に立つと、やはり生産現場は「事業部門に従属する」という考え方に捉われず、各部門とは等距離にあり、自律して運営する必要がある事に気づきます。
生産現場の自律運営の先にあるもの
生産現場の自律運営は、上記でお話ししたように「確かなものづくり」に必要なことですが、それだけではなく、工場や現場で働く社員に自信を与え、プライドを生み出し、「よりよいものづくり」にも繋がるものです。
本コラムのまとめとして、このような「生産現場の好循環」のポイントを4つ挙げます。
①現場は、それをサポートする各部門に支えられることで成立する
②現場は、どの部門からも等距離で、独立し『自律』している
③現場は自律し、責任を果たし、結果を出すことで 『プライド』 を持つ
④現場のプライドは、自らの進化を促し、現場の成長につながる
五十嵐 弘司
1980年に味の素(株)入社、バイオ精製工程のプロセス開発に従事。1998年からアメリカ味の素(株)アイオワ工場長、技術開発センター長を経て上席副社長。2009年、味の素(株)執行役員経営企画部長、その後、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員に就任。
中期経営計画の策定、M&Aの実務実行など、味の素(株)で経営の中枢を担う。また、技術統括・情報統括として、イノベーションの実現、グローバル展開、ICT活用やデジタル化を推進した。
現在、一般社団法人日本能率協会上席アドバイザー エクゼクティブフェロー、公益社団法人企業情報化協会上席顧問 エクゼクティブアドバイザー等を歴任し、日本産業界の再成長にむけ取組み中。
「競争優位を実現する成長戦略と経営基盤」ほか、企業経営に関わる多数の講演実績がある。著書「技術者よ、経営トップを目指せ!」(2019年11月、日経BP)を出版。
近日公開予定のChart(各記事公開後にリンクが貼られます)
Chart01:技術のバリューチェーン
Chart02:生産の2類型
Chart03:事業の2類型
Chart04:事業類型と生産類型の組み合わせ
Chart05:現場の自律性(本コラム)
Chart06:現場を見る視点
Chart07:2種類のPDCA
Chart08:プロジェクト決断のタイミング