【#07:2種類のPDCA】~技術者こそ経営者を目指せ!~ イノベーションリーダーが知っておきたい30のチャート
日本能率協会の上席アドバイザーエグゼクティブフェローの五十嵐氏による本連載コラム。
今回のコラムでは、一般的な文脈で用いられるPDCAではなく、「現場カイゼン」の取り組み手法に使うPDCAサイクルを紹介します。
“一般的な”PDCAサイクル
PDCAサイクルとは
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)
を繰り返すことによって、生産管理や品質管理などの管理業務を継続的に改善していく手法のことです。
読者の皆さんが所属されている組織の中でも、PDCAを導入しているところは多いのではないでしょうか。
一般的には、PDCAの取り組みにおいて、Check(評価)では「設定したKPIを達成しているか」を見るように、「業績向上・業務効率改善」の文脈で導入されることが多いです。
数値目標の達成度合いを評価することでサイクルを回しています。
“現場の”PDCAサイクル
しかし、現場のPDCAはそれとは異なり、Plan(計画)では数値設定よりも、むしろ「全員で行う行動基準」に重点を置くことが大切です。
Chart07:2種類のPDCA
当然、「行動の結果として、目標が確実に達成できる」ことを事前に検証しておくことが前提ですが、そうやって検証された「行動」を念頭においてサイクルを回す、という考え方となります。
従って、Do(実行)では一人一人が実際に行動基準で決めた業務を行い、Check(評価)では「決めた行動基準ができているのかどうか」を確認します。
Check(評価)の段階で、決めた行動基準ができない人がいる場合、追加施策でAction(改善)するのではなく、再度Plan(計画)に戻り、新たな基準を作ることになります。
サイクルを回すポイント
PDCA手法は多く用いられていますが、
・常に同じ平面をまわり進化しないPDCA
・無理を積み重ねるPDCA
・数値達成の追加施策を並べるPDCA
等が散見されます。
PDCAサイクルを成功させるには、無理をした目標数値や、あまりにも挑戦的な高いゴールを計画しないことがポイントです。
①楽にPDCAを一周まわしてみる
②サイクルを回すことで参加者全員が一段上のレベルになった実感を得る
③取り組みを継続して行う
これら①~③をベースに置きましょう。
無理なく、らせん階段を上がるような感覚で、息切れしない活動にすることが大切です。
五十嵐 弘司
1980年に味の素(株)入社、バイオ精製工程のプロセス開発に従事。1998年からアメリカ味の素(株)アイオワ工場長、技術開発センター長を経て上席副社長。2009年、味の素(株)執行役員経営企画部長、その後、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員に就任。
中期経営計画の策定、M&Aの実務実行など、味の素(株)で経営の中枢を担う。また、技術統括・情報統括として、イノベーションの実現、グローバル展開、ICT活用やデジタル化を推進した。
現在、一般社団法人日本能率協会上席アドバイザー エクゼクティブフェロー、公益社団法人企業情報化協会上席顧問 エクゼクティブアドバイザー等を歴任し、日本産業界の再成長にむけ取組み中。
「競争優位を実現する成長戦略と経営基盤」ほか、企業経営に関わる多数の講演実績がある。著書「技術者よ、経営トップを目指せ!」(2019年11月、日経BP)を出版。
近日公開予定のChart(各記事公開後にリンクが貼られます)
Chart01:技術のバリューチェーン
Chart02:生産の2類型
Chart03:事業の2類型
Chart04:事業類型と生産類型の組み合わせ
Chart05:現場の自律性
Chart06:現場を見る視点
Chart07:2種類のPDCA(本コラム)
Chart08:プロジェクト決断のタイミング